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コラム

不動産売却「その不動産、当初いくらで買いましたか?」

所得税

土地建物を売却すると、多額な収入金額に関心が集中し、つい納税額や税金軽減措置といったことばかりに関心が行きがちです。でも、まずもって大事なことは「その不動産は×××万円で買った」という情報です。土地建物を売却したときの税金の算定方法は、売却価額を基準とするのではなく、所得金額所得金額収入金額[売値]-取得費[買値]-譲渡費用[売却時の手数料等])で計算することになっています。例えば、収入金額が1億円でも買った値段が9,500万円であれば譲渡費用を差し引けば課税される所得金額は少ない金額になるわけです。
ところが、現実に売却したあと、「買った時の売買契約書がない!」「捨ててしまった!」というケースがしばしばあるのです。こうした場合には次のように2つの計算方法のどちらかで所得金額を計算することになっています。

① 売却額の5%を取得費とする方法 

② 取得費を推計し、その推計値を取得費とする方法

①の利点は簡単な計算で取得費を算定できることです。先の事例で言えば、1億円×5%=500万円が取得費となり、当然ながら所得金額は多額に算定され納税額も相応に多額になります。それでは②で申告したい場合にはどうやって推計するのでしょうか?

【建物】

・建築統計年報で確認する。https://www.kensetu-bukka.or.jp/browsing/index.html

昭和40年前後以降の統計を入手できます。なお、税務署のパンフレット「譲渡所得の申告のしかた」にも建築単価の記載がありますが、構造などの分類が大まかすぎますので、推計値として使うにはやや不適切と考えられます。

【土地】

次のようなデータを使って推計する。

・市街地価格指数 https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102136.php

・公示価格 http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0

・路線価 https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102052.php

上記中、公示価格や路線価は新聞紙上でも目にし広く周知されているところですね。路線価は通常国税庁HPで確認できますが古いものは国会図書館で入手します。地元の図書館にあたってみると所蔵している場合があります。
国税不服審判所の平成12年11月16日裁決において、市街地価格指数を使って推計した取得費に合理性があるとの判断がなされていることから、上記においては市街地価格指数を情報源の一番目に掲げてみました。

以上が取得費の推計に使用したい代表的なデータですが、別のアプロ―チとしては購入当時の預金通帳を調べる方法、住宅ローンを組んでいた場合の登記簿の乙区に記載された債権額、住宅ローン控除(昭和46(1971)年創設)を受けていた場合の確定申告書の控え、資金贈与を受けていた場合の関連資料、前所有者への確認、同時期に購入したご近所さんの情報などを使用して検証するのもよいでしょう。そして最終的には、複数のデータを組み合わせて合理的に算定した推計値の資料を確定申告書に添付する、というのが適切な実務といえそうです。(菅家)