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コラム

事業承継税制⑥ 遺留分の問題

相続税・贈与税

 税法以前の問題が大きい・・・

[贈与税の納税猶予制度] を利用する場合に、あらかじめ検討し対策を講ずべき事項として「遺留分」の問題があります。

「遺留分」とは民法の規定により相続人(兄弟姉妹及びその子を除く。) に保証された最低限の相続財産のことで、次のように算定します。

(相続人全体にとっての遺留分の額)

([被相続人が相続開始に有していた財産]+[相続前1年以内の生前贈与]+[特別受益※]ー[負債])× 1/2(父や母だけが相続人の場合は1/3)=遺留分(A)  

※遺贈または(婚姻・養子縁組のため、生計の資本としての)生前贈与をいう。

(相続人全体にとっての遺留分の額)

(A) × 各人の法定相続分 = 各相続人の遺留分の額

 

自社株の生前贈与は特別受益に含まれますので、相続が開始されると後継者以外の相続人から遺留分を請求される可能性があります。この場合、後継者は生前贈与された自社株は他者に渡さない蓋然性が高く、「価格弁償」すなわち金銭で遺留分を支払うことになると予想されます。こうした遺留分減殺請求に備え、現行法のもと、次のような対策が考えられます。

①遺留分の金額が算定されないように(少なくなるように)する方法

  ⇒ 遺留分に関する民法特例(円滑化法)の利用

②あらかじめ遺留分を放棄してもらう方法

  ⇒ 遺留分放棄の許可の申立て(民法)

③相続開始時の遺産を減らすことで遺留分も減らし、かつ減殺請求の支払原資を確保する方法

  ⇒ 生命保険契約

④遺言や信託を使って後継者以外の相続人へ手当てする方法

 

①の制度はは2008年の制度開始から2014年2月までの利用者数がわずか69件、ハードルの高い手続きであることが窺われます。現状では②と③が現実的で有効な手続きとなりますが両者のメリット・デメリットを十分に検討の上、いずれか或いは両方の対策を組み合わせる等の工夫が必要でしょう。④は、先代経営者の気持ちを文章で伝えるとともに、工夫次第で細やかな対応を手当てすることが可能であり、遺留分請求そのものを思いとどまってもらえる可能性があると考えられます。

また2018年7月に参院を通過した民法改正案においては、

 ・特別受益の持ち戻し期間を相続開始前の10年間の贈与に限定

 ・遺留分の金銭債権化

といった内容が盛り込まれており、遺留分対策や事業承継の計画にプラス要因として働くことが想定されます。事業承継プランは長期間に及ぶため、関連法改正にも留意していくことが肝要です。