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コラム

2020年 税制の在り方を問う

OPINION

税制調査会がまとめた報告書「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制の在り方」に次の記載があった。

<令和時代税制の在り方>

当調査会は、上述のような経済社会の構造変化を踏まえて、平成 27 年 11 月
の「論点整理」等をとりまとめてきた。これらを踏まえて、働き方やライフコー
スの多様化への対応や所得再分配機能の回復等の観点からの個人所得課税の諸
控除の見直しをはじめとする、税制の見直しが進められてきた。令和の時代に
おいても、こうした取組を更に進めていかなければならない。令和の時代の税
制は、持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成の両立を目指す
経済財政政策を踏まえて、「公平・中立・簡素」を基本としつつ、大きく以下の
課題に対応していく必要がある。・・・(以上抜粋)

 

これを見て愕然としてしまったのは私だけだろうか。その古めかしさに驚いてしまったのだ。例えば、税制がもたらす所得再分配機能は確かに低下したが、それは平成不況にテコ入れすべくアベノミクスを発動させ、所得配分機能を敢えて軽視してでも経済の再生を優先した想定内のことではなかったのか?所得再分配機能は年金などの社会保障分野にバトンタッチしたのではなかったのか?

2013年に「三本の矢」と称して始まったアベノミクス、この政策と一体となって様々な変化を遂げ高度に複雑化してきたのが現在の税制だ。今日まで僅か7年程度だが、もう昔の税制に戻れないほどに変貌している。教育費の無償化までもが達成されつつある今日、「所得再分配機能」と「経済成長」というどちらかといえば逆方向にあるベクトルを「税制」というひとつの入れ物に入れてかき混ぜてどうしようというのだろう?

「IMD世界競争力年鑑」において、日本の総合順位は次の通りだ。

1990(平成2)年第1位  1995(平成7)年第4位   1999(平成11)年第24位     2002(平成14)年第24位  2005(平成17)年第19位  2010(平成22)年第27位   2015(平成22)年第27位  2018(平成22)年第25位  

これをみても、アベノミクス実施後、日本が経済力や競争力を回復したとはいえないと私は思う。だからといって1990年当時の税制に戻ることはできないのだ。「元々はこうだったからまた戻そう」という発想ではあまりにミクロな視点であり、また税の実務家の我々としては正直ご勘弁願いたいという気持ちだ。「公平・中立・簡素」「所得再分配機能」という概念を卒業して一段階ステージを上げ、新たなる視点から税制を構築してほしいのだがそこでヒントとなるのは上記のIMD世界競争力年鑑の総合順位25位(全63位中)の中身ではなかろうか。そこには、国家をあげて取り組むべきは「高効率性への挑戦」であるということがはっきりと示されている。

日本の大分類順位

経済状況第15位  政府効率性第41位  ビジネス効率性第36位  インフラ第15位