コラム

令和3年度税制改正(法人税制ーその1)

法人税

(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制(創設、大企業向け)
日本企業の95%が未着手という危機的状況にあるDX、このままでは2025年以降年間最大12兆円の経済損失が生じるとされる(Dレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開、https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.htm)。部署毎に異なるシステム、過度なカスタマイズによるブラックボックス化などの阻害要因を克服するためDX化を税制から支える制度として創設。
産業競争力強化法に基づき2023(R5)年3月31日までに「事業適応計画」の認定を受けた青色申告法人が、同計画に従って取得するソフトウエア及び繰延資産に計上するシステム移行初期費用に対し、特別償却(30%)または税額控除(3%、グループ外事業者連携時は5%)できる。なお税額控除は下記(2)の控除税額との合計で当期法人税額20%が控除の上限。
想定事例としては、小売業における販促情報提供や無人決済、製造業でのロボット導入など。

(2)カーボンニュートラル投資促進税制(創設、大企業向け)
2050年にカーボンニュートラルを実現し、脱炭素化投資の加速と関連産業の成長を促すべく創設。産業競争力法の「中長期環境適応計画」の認定を受けた青色申告法人が、2024(R6)年3月31日までに同計画に記載した「中長期環境適応生産性向上設備(生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備)」または「中長期環境適応需要開拓製品生産設備(脱酸素化を加速する製品)」を取得・事業共用した場合に、特別償却(50%)または税額控除(5%、温室効果ガス削減に顕著に資するもの10%)できる。なお税額控除は下記(1)の控除税額との合計で当期法人税額20%が控除の上限。

なお対象資産の取得価額の合計500億円が限度。

(3)繰越欠損金控除上限の特例(大企業向け)
産業競争力強化法改正法施行日以後1年以内に「事業適応計画」の認定を受けた青色申告法人のうち同計画の事業適応(経済社会情勢の変化に対応するための所定の行動)を実施する法人が、「適用事業年度(2020(R2)年4月1日から2021(R3)年4月1日までの期間を含む事業年度)」において有する「特例対象欠損金」について、欠損金繰越控除前の所得金額の50%相当額の損金算入を可能とするとともに、50%超部分については事業適応計画における投資額を上限として損金算入(過年度における本特例適用部分を控除した投資額枠残額を限度)を可能とする。
なお「適用事業年度」とは①②③の全てに該当する事業年度をいう。
①特例対象欠損金額が生じた事業年度のうち、その開始の日が最も早い事業年度後で最初に所得が生じた事業年度(基準事業年度という)開始の日以後5年以内に開始した事業年度であること。
②事業適応計画の実施時期を含む事業年度であること。
③2026(R8)年4月1日以前に開始する事業年度であること。

(4)株式対価M&Aを促進するための措置
他社との連携を進める手段として子会社化(買収)が挙げられるが、それを促進すべく2019年度会社法改正で株式会社が他の株式会社を子会社化する際に買収の対価として自社株交付を可能とする「株式交付制度」が設けられた。今回の改正で、この制度において生ずる譲渡株式に係る譲渡損益はその課税の繰延べを可能とし、金銭を含む混合対価であっても金銭が20%以下であればこの措置の対象とする。

(5)中小企業事業再編投資損失準備金(創設、中小企業向け)
中小企業経営強化法改正法施行日以後2024(R6)年3月31日までの間に、同法に基づく経営資源集約化措置(他社株の取得を含むM&Aの実施)が記載された経営力向上計画の認定を受けた青色中小企業者が、計画に従い株式を取得・継続保有した場合において、その株式等の価額の低落による損失に備えるため、その株式の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立金額は損金算入できるものとする。加えて、上述の認定を受けた中小企業者に対し次の特例を設ける。
①修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する計画であることを前提に、「中小企業経営強化税制の新たな類型」として特定経営力向上設備の対象資産に「経営資源集約化設備」を追加する。
②所得拡大促進税制の上乗せ条件に必要な計画の認定を不要とする。

(6)「継続雇用者支給額増加割合」基準を廃止
「(中小企業)所得拡大促進税制」と「(大企業)賃上げ・投資促進税制」の適用要件とされていた継続雇用者給与支給額増加割合基準(各制度において1.5%以上、3.0%以上)がなくなったことにより、原則的に給与継続雇用者の抽出(該当人員およびその支給金額の抽出)は不要とされた。ただし「大企業に係る税額控除適用除外措置(措法42の13)」との関係上、継続雇用者の抽出が必要となる場合がある。
所得拡大促進税制での改正後の賃金要件は次の通り。
(雇用者給与等支給額ー比較雇用者給与等支給額(A))÷(A) ≧ 1.5%

【参考】改正後の「(中小企業)所得拡大促進税制 」の概要
賃金要件:雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額≧比較雇用者給与支給額✕1.5%
税額控除:(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)✕15%(※)
        ※教育訓練費増加要件を満たす場合には25%
税額控除上限:当期法人税の20%

(7)「(大企業)賃上げ・投資促進税制」から「人材確保等促進税制」へ再編
「(大企業)賃上げ・投資促進税制」を大幅に見直し、設備投資要件をなくすとともに、「継続雇用者給与等支給額増加割合3%以上」を「新規雇用者給与等支給額増加割合2%以上」に変更、税額控除額計算においても、「(雇用者給与等支給額ー比較雇用者給与等支給額)✕15% 」 から 「 控除対象新規雇用者給与支給額✕15% 」と改編して「人材確保等促進税制」としてリニューアルする。なお「(中小企業)所得拡大促進税制」とこの「人材確保等促進税制」の併用はできない。
また従前からの控除率上乗せ措置については、比較教育訓練費増加割合の計算における比較教育訓練費の定義が「前期の教育訓練費(改正前:前期と前々期教育訓練費の平均)」に改められる。

※上記(6)・(7)は、2021(R3).4.1~2023(R5).3.31の間に開始する各事業年度に適用。

(8)「給与等に充てるための他の者から支払いを受ける金額」の定義を明確化
「(中小企業)所得拡大促進税制」と「(大企業)賃上げ・投資促進税制)」の適用要件判定において、給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額(代表例:雇用調整助成金)がある場合には「給与等」からこれを控除していたのだが、この取り扱いを改め、改正後は「給与等」から雇用調整助成金等を控除しないこととする。ただし、税額控除限度額計算上では従前どおり控除することに留意する。