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コラム

「遺言書」あるだけではダメ?!従来から一変した取扱い

相続税・贈与税

遺言が「自分亡き後、自分の財産を誰々に渡します」といった内容であることは広く知られているが、実際の文章、特に遺言公正証書(公証役場で作成した遺言書)におけるそれは、多くの場合次のような表現で書かれている。

◆ 遺言者 山田太郎  は、後記目録記載の財産を 相続人 長男 山田一郎 に相続させる。
 (目録に具体的財産が記載される)

こうした特定の遺産を特定の相続人に相続させる内容の遺言は、一般に「相続させる遺言」と呼ばれ、複数の最高裁判決を通じて「相続させる遺言」に関する解釈や取扱いが確立された結果、一種のスタンダードとして確立されるに至り、この文言そのものが広く利用されてきたのである。
ところが、このたび40年ぶりの改正を経て2019年7月1日に施行された民法により、この「相続させる遺言」は「特定財産承継遺言」という名称に改められた上、今までの取扱いにはなかった「対抗要件主義」を適用することになった。これはつまるところ、遺言があっても法定相続分を超える部分については「登記がなければ権利を主張できない」ことになった、ということを意味する(民899条の2)。
従来の取扱いでは、「相続させる遺言」さえあれば登記をしていなくても相続不動産はその権利の取得を第三者に対抗できたが、施行日以後の相続からは、遺言内容を登記していなければ第三者に対抗できず次のような事態があり得るから、ともあれ、相続開始後にいち早く遺言に基づく不動産登記を進めることが肝要だ。

《事例:相続が発生したが不動産登記は未了》
父 A:自営業者(配偶者無し)
長男B:Aと同居し父の事業所に勤務、後継者
二男C:サラリーマン
財産 :店舗付き居宅、宅地、預金
遺言内容:不動産をBへ、預金をCへ相続させる

上記において二男Cが不動産に法定相続分1/2を登記、その後この持分を「善意の第三者」(当事者間に存在する特定の事情を知らない第三者)へ売却した場合、この第三者は保護されて持分を取得することができる。
次に、二男Cに多額の債務があった場合、その債権者は不動産に係るCの持分に対して差押えをすることができ、この場合は債権者の善意悪意を問わない。
いずれにしても長男Aは事業承継をあきらめるか、それなりの高値で持分を買い戻すしか事業承継の道がなく、遺言した父Aの意思は実現しないことになる。